宇宙背景放射とビッグバンの証拠 雑学 ふしぎ発見

宇宙背景放射、これは宇宙誕生の痕跡とも言えるものです。
宇宙が誕生したとされるビッグバンから約38万年後に放たれた光で、現在も宇宙全体に広がっている微弱なマイクロ波放射です。
その温度は約2.725ケルビン、つまり絶対零度よりわずか2.7度高いだけです。
ビッグバンから138億年が経過した今でも、この冷えた放射が宇宙を包んでいます。

ビッグバン直後、宇宙は超高温・高密度のプラズマ状態でした。
その温度は約1兆ケルビンにも達し、物質とエネルギーが混じり合い、光は物質に散乱されて閉じ込められていました。
しかし、宇宙が膨張し温度が約3000ケルビンまで冷えると、電子と陽子が結びついて水素原子が形成され、
光が自由に移動できるようになりました。この時放たれた光が、今日の宇宙背景放射です。

この背景放射がビッグバンの証拠とされる理由は、その均一性にあります。
宇宙背景放射の温度分布は全方向で非常に均一で、温度差は10万分の1程度しかありません。
この驚くべき均一性は、ビッグバンで膨張した宇宙が急速に温度を均一化した証拠と考えられています。
もしビッグバンがなかったとすれば、こんなに均一な温度分布は説明できません。

さらに、この均一な背景放射には小さな揺らぎも観測されています。
温度の揺らぎは数百万分の1程度ですが、このわずかな違いが現在の銀河や星の形成の「種」となっています。
宇宙の初期に存在した微小な密度の違いが重力で引き寄せ合い、星や銀河といった構造が誕生したんです。

この宇宙背景放射の存在を初めて発見したのは、1965年のペンジアスとウィルソンでした。
彼らは電波天文学の研究を行っていた際に、アンテナから聞こえる謎の雑音を検出しました。
最初はハトのフンや装置の故障が原因だと思いましたが、どれも違いました。
実際にはこの雑音こそが、約138億年前に放たれた光の名残、すなわち宇宙背景放射だったのです。
その発見により、ビッグバン理論は一躍注目を浴び、彼らは1978年にノーベル物理学賞を受賞しました。

その後、宇宙背景放射の詳細な観測が進み、1992年にはNASAのCOBE衛星が温度揺らぎを初めて観測しました。
さらに2003年のWMAP衛星、2013年のプランク衛星による観測で、揺らぎの精密な地図が作成されました。
これにより、宇宙の年齢が138億年と特定され、ビッグバンから現在までの進化がより正確に描けるようになったのです。

宇宙背景放射は、まさに宇宙のタイムカプセル。
その中には、私たちが住む宇宙の起源と進化の秘密が刻まれているのです。

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